オンナの毎日

女性たちのこと。

アメリカのオンナ-悦子の場合

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悦子と同い年の、同じようにシングルマザーの女がいた。

晴子というその女は、悦子とは状況などが似ていたようで、2人は時間をかけずに、距離を縮めた。

 

晴子について少し書くと、晴子はいわゆる、女子高生のまんま、大人になったような人だ。

結婚、離婚を経験し、子どもを1人産み育て、その後も別の男とお付き合いしてきたりもしていたが、今もなお、現役で女を続けている。

男のことが、好きだ。

悦子は、晴子のその姿勢について、同い年であるがゆえに、大変興味を持ったようだった。

 

わたしはというと、いつも一緒にいる年上の女2人組に、つかず離れず、ちょっとしたお二人のスパイスとして、たまにその会話に参加させてもらっていた。

あまり全てにおいてくっついて話していると、年上のお二人の、気分を害する場合が何度かあったからだ。

 

ある日、悦子が朝から話しかけてきた。

悦子が、自分からわたしに話しかけてくる場合、それはたいがい、自分が腑に落ちないできごとが、あったときだ。

三者の、冷静な意見を、聞きたい。

 

「晴子さんがね、既婚者にいいように扱われてるのに、全然わかってないのよ。どうしてだろう?」

 

悦子は、見た目は柔らかな優しい雰囲気だが、実は男に対しては、非常に厳しいハードルを掲げている。

そんじょそこらの男には、悦子が心を許すことは絶対に、ない。

まして、友達にちょっかいを出してくる、既婚者の男なんて、もってのほかなのだ。

 

「晴子さんは、女の自分を試してるだけじゃないんですかね?」

 

一方わたしは、晴子のような女も、世の中には存在すると思っていたので、悦子のような友達思いの感情もなく、既婚者との恋愛は晴子の趣味、ぐらいの感覚でいた。

その相手と幸せになりたい、というようなことを、晴子から聞いたことがなかったからだ。

 

「でもさ、結局その男の一挙手一投足で、落ち込んだり悩んだりしてるんだよ。なんでわざわざ、あんな相手を選ぶの?」

 

たまに悦子は、グッと力を入れて、人に詰め寄る。

それが彼女の、強さなのだ。

絶対に揺るがない、確固たる意志を、持ってるのだ。

 

「それも含めて、本人は気づいていないのかもしれないけど、好きなんじゃないですか?」

 

わたしは、個人的には悦子の考えに近く、そもそも相手がいるくせに、他の女にもちょっかいを出す男には、興味がない。

しかし、だからこそ燃える、女の闘志みたいなものを持っている女が、いることを知っていた。

たいがいの場合、そういう女は、既婚者の男のほうではなく、その男の妻に向けて、攻撃的になる。

女は、非合理で、エモーショナルで、パッショナブルなところがあるのだ。

特に、男がからむと。

 

「わたしは、晴子さんは友人だから、苦しむ姿を見たくない。どうにかして、目を覚ましたい。」

 

悦子の周囲には、既婚者とばかり恋愛をしている女が、他にもいるそうだ。

毎回、同じことを繰り返し、傷ついて、同じことを悦子に言ってくるらしい。

わざわざ自分から、そんな思いをしにいく、そんな女たちが、悦子には理解できないし、これからもしない。

 

晴子は、その後何度も何度も、同じことを繰り返してはいたが、数ヶ月すると、パタリとその男の話をしなくなっていた。

たまに、「その男から連絡がきた」というようなことを言ってきたが、その声は、浮かれていなかった。

悦子といつも一緒にいることで、晴子になにか、変化があったのかもしれない。